いちばんわかりやすいビットコインの説明

2018年10月11日、米上院の銀行・住宅・都市問題委員会が「暗号通貨とブロックチェーンのエコシステムを探る」と題した公聴会を開いた。証人は二人。ひとりは「ドクター・ドゥーム」の異名で知られる経済学者ヌリエル・ルビーニで、暗号通貨を「あらゆる詐欺とバブルの母」と切って捨てた。もうひとりが、本稿で紹介するピーター・ヴァン・ヴァルケンバーグである。

ヴァン・ヴァルケンバーグは、ワシントン D.C. の非営利シンクタンク Coin Center の研究ディレクターを務める。Coin Center は2014年の設立以来、暗号通貨とパブリック・ブロックチェーンに関わる公共政策を専門に扱い、議会・規制当局への説明役を担ってきた組織だ。彼自身は法律家で、技術の中身を政策の言葉に翻訳する仕事を長く続けている。

この日の冒頭陳述は5分ほどの短いものだが、その後「いちばんわかりやすいビットコインの説明」というタイトルで動画が切り出され、いまも繰り返し共有され続けている。ビットコインを語る文章や講演で引用されることも多く、暗号通貨業界の内外を問わず「まずこれを見てほしい」と勧められる定番になった。

https://www.youtube.com/watch?v=HzxKs-Jd0H4

理由は、話の組み立てにある。ハッシュや秘密鍵といった技術の話を一切せず、「なぜ中間業者なしで動くことが重要なのか」だけを、インターネットや現金といった誰もが知っているものとの対比で説明する。Equifax の情報漏洩、SWIFT を通した銀行強盗、乗っ取られた Jeep。単一障害点を持つ私有インフラの失敗を並べたうえで、ビットコインを「決済のための公共インフラ」と位置づける。この一貫した筋が、8年近く経っても古びない理由だろう。

以下、証言の一部を抜粋して紹介する。原文は Coin Center のサイトと上院委員会の記録で公開されている。

ビットコインとは何か。ビットコインは世界初の暗号通貨であり、世界初のパブリック・ブロックチェーン・ネットワークがあるからこそ動いています。ビットコインは何をするのか。答えは単純です。コンピュータとインターネット接続さえあれば、世界中の誰とでも価値を送り、受け取ることができる。それだけです。

では、なぜそれが革命的なのか。インターネット経由でお金を送る他のあらゆる手段と違って、仲介者を信用する必要なしに動くからです。間にどんな企業も挟まらない。つまりビットコインは、世界初の「公共の」デジタル決済インフラなのです。ここで言う「公共」とは、誰でも使えて、どの一つの主体にも所有されていない、という意味にすぎません。

私たちは情報のための公共インフラをすでに持っています。ウェブサイトのため、電子メールのためのインフラ、すなわちインターネットです。しかし決済のための公共インフラとなると、あるのは現金、つまり紙幣だけで、それは対面の取引でしか使えません。ビットコイン以前は、電話やインターネット越しに離れた相手へ支払いたければ、公共インフラは使えませんでした。民間の銀行に頼み、その銀行が帳簿を開いて、あなたの口座を減らし相手の口座を増やす記帳をしてもらうしかなかった。しかも二人が同じ銀行を使っていなければ、間に複数の銀行と複数の記帳が挟まることになります。

ビットコインでは、帳簿はパブリック・ブロックチェーンです。誰でもその帳簿に記帳を加え、自分のビットコインを他人へ移すことができる。そして誰でも、国籍・人種・宗教・ジェンダー・性別・信用力を問わず、まったく無料でビットコインのアドレスを作り、デジタルで支払いを受け取れます。ビットコインは、世界で初めて、地球上の誰もがアクセスできる公共の通貨なのです。

完璧でしょうか。いいえ。1972年に発明されたときの電子メールも完璧ではありませんでした。ビットコインはあらゆる面で最良の通貨というわけではない。まだどこでも受け取ってもらえるわけではないし、値段を付けるのに使われることも少ないし、価値の保存先としていつも安定しているわけでもない。それでも、動いているのです。信用できる仲介者なしに動いているという、そのこと自体が驚くべきことです。これはコンピュータ科学のブレークスルーであり、自由と繁栄と人間の開花にとって、インターネットの誕生に匹敵する意味を持つでしょう。

なぜ公共インフラを増やすべきなのか

ここから先、証言は問いを裏返す。民間の決済インフラを置き換えられるなら、人と人との関わりを絞っている他の民間の関門も置き換えられるはずだ。ではなぜ、企業の仲介者よりブロックチェーンを選ぶべきなのか。

理由として挙げられるのは、重要なインフラを私有する企業が数を減らし、規模と力を強めていること、そして失敗したときの被害が大きくなっていることである。Equifax の情報漏洩で流出した社会保障番号は1億4300万人分、全米国人のおよそ半分にあたる。インドの Punjab National Bank では下級の職員が SWIFT メッセージを不正に承認し、18億ドルを盗み出した。史上最大の銀行強盗である。ボットネットに変えられた120万台の機器も、乗っ取られたペースメーカーやベビーモニターや走行中の Jeep も、同じ列に並ぶ。どれも、単一障害点を持つシステムでは避けようがない失敗だ。障害点が企業か政府かは関係ない。

インターネットは通信インフラから単一障害点を取り除き、その公共のレールの上で新しいメディア企業が競い合う条件を作った。ブロックチェーンは、決済と IoT で同じことができる。証言はそう述べたうえで、1990年代のインターネットと同じように軽い規制でイノベーションを後押しし、開拓者が海外へ逃げずに米国で花開くようにしてほしい、と結ばれる。

出典