米SEC、クリプト向け資金調達ルール「Regulation Crypto Assets」を提案

2026年8月18日に米SECは、「Regulation Crypto Assets」というクリプト向け資金調達ルールの規則案(proposing release)を採択し、パース委員がそれに賛成の立場から声明を出しました。

https://www.sec.gov/newsroom/speeches-statements/peirce-statement-regulation-crypto-assets-081826

長年「Crypto Mom」として既存証券規制のクリプトへの機械的適用を批判してきた本人にとって、2020年のセーフハーバー提案(「Running on Empty」講演)以来の構想がようやく正式な規則案になった、という節目の文書です。

提案の中身(声明から読み取れる範囲)

1933年証券法の登録義務に対する 2つの新しい免除(exemption) と、1つのセーフハーバーが柱です。対象は「投資契約(investment contract)の一部として売られるクリプト資産」の募集。

  • スタートアップ免除: 4年間で最大 500万ドル までの募集を登録なしで認める。小規模プロジェクト向け。
  • ファンドレイジング免除: 財務諸表の提出と継続開示を条件に、12か月ごとに最大 7,500万ドル までの募集を認める。より大きい調達向け。
  • どちらも詳細な様式ではなくプリンシプルベースの開示を要求し、詐欺・相場操縦の禁止規定は従来どおり適用される(免除は登録義務の免除であって、不正の免罪ではない)。
  • 条件付きセーフハーバー: 発行者が、かつて投資契約に紐づいていたクリプト資産をその投資契約から「切り離す(delink)」手続きを定める。つまり「トークンの販売時は証券取引でも、条件を満たせばトークン自体はその後証券規制の外に出られる」道筋を明文化するもの。2026年3月17日に SEC と CFTC が共同で出した解釈(クリプト資産が投資契約の対象でなくなる場合についての解釈)を補完する位置づけです。

声明のポイント

  • 冒頭の「ガソリンスタンド」の逸話は 2020年講演の再演です。ニュージャージー州では法律でセルフ給油が禁止なのに、店員は「自分で入れろ」と言う——善意の人が従えないルールは機能しない、という彼女の一貫した主張の比喩。これまでの SEC のクリプト対応を「不適合なルールの適用を、投資家や起業家への悪影響を顧みず強要してきた」と暗に批判しています。
  • この規則案は単独ではなく、議会の立法(market structure 法案など)を中心とする、より大きなクリプト規制イニシアチブの一部と明言。2025年2月の Crypto Task Force の意見募集から積み上げてきた成果という位置づけです。
  • 今後への注目点として、「トークンが株式(equity)に近い役割を果たし、トークン保有者がネットワークを作る企業の成長と価値を分かち合えるようにする」方法への意見を特に求めています。これは「トークン=証券かどうか」の二分法を超えて、トークンに配当・持分的な性格を正面から認める設計を検討している示唆で、個人的にはここが一番踏み込んだ部分だと思います。
  • コメント期間は 60日間。まだ提案段階であり、最終規則ではありません。

文脈の補足

Gensler 時代の「執行による規制(regulation by enforcement)」からの転換が制度として固まりつつある流れの一つです。2020年に彼女が個人提案したセーフハーバー(3年間の猶予期間案)は当時実現しませんでしたが、今回は Commission 全体の正式な規則案として出ており、金額上限つき免除+delink セーフハーバーという、当初案よりも構造化された形に落ちています。ICO 的な資金調達に合法的なレールを敷き直すもので、成立すれば米国でのトークン発行の実務が大きく変わります。