OCC、GENIUS法の最終規則を11月までに公表へ
2026年8月19日に米OCC(通貨監督庁)は、Gould通貨監督官がGENIUS法の最終規則を11月までに出すと述べたことを、ニュースリリースとして公表しました。発言の場はワイオミング州ジャクソンホールで開かれたWyoming Blockchain Symposiumのファイヤーサイドチャットです。
https://www.occ.gov/news-issuances/news-releases/2026/nr-occ-2026-69.html
リリースは発言の抜粋を3つの見出しに分けて載せる短いもので、規則の中身を明かすものではありません。それでも、期限を過ぎた最終規則の着地時期と、免許申請の実数という2つの数字が入っています。
発言の中身
新規銀行免許とデジタル資産について。 トランプ大統領の就任以降の18か月ほどで、OCCは40件の新規銀行免許申請を受理しました。そのうち事業計画に何らかのデジタル資産業務を含むものが23件、半数超です。Gould氏はこれを「バイデン政権の4年間と比べて8倍」と表現し、さらに「今後の申請予定者のパイプラインを見ると、決済用ステーブルコインを事業計画に組み込むことが当たり前になりつつある」と述べています。
GENIUS法について。 「大統領が法案に署名する前から規則の作業をしていた。11月までに最終規則を出す」。あわせて「決済用ステーブルコインという新しい産業の誕生を目撃している」という言い方をしています。
今後について。 Gould氏はOCCの役割を、1860年代の設立時の任務に引き戻して説明します。当時OCCが担ったのは、国法銀行が発行する銀行券の裏付け資産が同じ水準の品質であることを確保する仕事でした。それが「議会が決済用ステーブルコインに関してOCCに課した任務と正確に対応する」というのが本人の整理です。
11月という数字が意味すること
「11月までに」は前向きな約束の形をしていますが、実際には遅延の表明です。
GENIUS法は2025年7月18日に成立し、施行規則を成立から1年以内、つまり2026年7月18日までに確定するよう規制当局に求めていました。OCCはこの期限を守れていません。ここまでの経過は、2026年2月25日に規則案(NPRM)を公表、3月2日にFederal Registerへ掲載、60日のコメント期間が5月1日に終了、という順です。11月はその先にある新しい目標であって、法律が指定した日付ではありません。
見落としやすいのは、最終規則が遅れても施行日はほとんど動かないという点です。GENIUS法の施行日は「成立から18か月後」と「最終規則から120日後」のうち早い方と定められています。前者は2027年1月18日、後者は11月に最終規則が出たとして2027年3月頃です。早い方が採られるので、施行日は2027年1月18日に固定されます。
つまり、最終規則が11月に出た場合、確定したルールを読んでから施行までに残るのは2か月ほどです。規則が遅れた分だけ、事業者側の準備期間が削られる構造になっています。この点は今後の争点になり得ます。
40件のうち23件
規則の時期よりも、免許申請の内訳のほうが実務的には重い数字かもしれません。
23件という数は、最終規則の確定を待たずに免許を取りに動いている主体が、既にそれだけあることを示しています。GENIUS法は決済用ステーブルコインの発行を許可制にし、連邦適格発行体という枠を設けました。その枠を狙う非銀行と、同じ業務を既存の免許の下でやろうとする銀行の両方が、この40件に混ざっていると考えるのが自然です。
ただし、これは申請の件数であって認可の件数ではありません。リリースは審査の状況にも承認率にも触れていないので、23件がどれだけ免許に到達するかはここからは読めません。
1860年代の比喩について
Gould氏が持ち出した国法銀行券の話は、単なる歴史の飾りではなく、規制の狙いを正確に言い当てています。
国法銀行券の時代、各銀行が発行する券が額面どおりに流通するためには、その裏付けとなる国債の質が揃っている必要がありました。裏付けの質にばらつきがあれば、発行体ごとに券の値打ちが変わってしまうからです。OCCが決済用ステーブルコインでやろうとしているのも同じ操作で、準備資産の中身を短期国債や現金といった範囲に限定し、発行体を許可制にすることで、どの発行体のコインでも1ドルは1ドルという状態を作ろうとしています。
言い換えれば、規制の主目的は発行体間の信用差をなくすことです。イノベーションを支援するという枠取りはリリースの前面に出ていますが、規則が実際に効く方向はそちらではありません。