【2026/10/19】今週のステーブルコイン & RWA
今週のニュース
💳 Visa Direct、ステーブルコインでの事前入金が本番稼働へ
Visa は、Visa Direct のステーブルコイン機能を試験段階から本番運用へ移すと発表し、これをステーブルコイン戦略の次の段階と位置づけました。最初に本番へ載せたのは Inyo Global です。Visa Direct の「事前入金」、つまり送金に先立って Visa 側へ資金を積んでおく工程をステーブルコインで行えるようになり、Visa Direct で国際送金を扱う企業がステーブルコインで資金を動かせます。これまで Visa のステーブルコインの取り組みは試験の発表が中心で、実際の資金の流れに組み込まれた例は限られていました。国際送金の事前入金は、時差や銀行の営業時間のせいで資金が寝やすい工程です。ここをステーブルコインに置き換えられるかどうかは、カード網がステーブルコインを決済の裏側の基盤として使うかどうかを測る試金石になります。今後は、Inyo Global に続いて本番へ移る事業者が出てくるかが注目点です。
💳 Stripe、ステーブルコインカードの対応国を拡大
Stripe は、フィンテック事業者が商品を立ち上げ、海外へ広げやすくするための3つの更新を発表しました。1つ目は Stripe Global Payouts による支払い管理の簡素化、2つ目はステーブルコインカードの対応国の拡大、3つ目は国をまたぐ金融商品を作るための統一 API です。ステーブルコインカードは、ステーブルコインの残高をそのまま既存のカード網での支払いに使えるようにするもので、ステーブルコインを持つ人が日常の決済に使うときの入り口になります。今回の発表は、その発行基盤を提供できる国を広げるものです。決済事業者の Stripe がフィンテック向けの標準部品として提供する国を増やすことで、各フィンテックが自前で発行体やカード網と交渉しなくてもステーブルコインカードを出せる範囲が広がります。発表には具体的な対応国名や数は示されていません。
🏗️ Tempo Earn、Hastra の PRIME と wYLDS に対応
ステーブルコイン決済向けのチェーン Tempo が、利回りを提供する機能 Tempo Earn で、Hastra が発行する PRIME と wYLDS に対応したと発表しました。Tempo によると、これにより Tempo 上のプラットフォームは、実物資産に由来する利回りを資金管理・カード・決済の商品へ組み込む選択肢が増えます。トークン化された実物資産はこれまで、主に DeFi の担保や投資商品として扱われてきました。今回の対応は、それを決済用チェーンの機能として、カードや送金の商品の中へ直接取り込む方向の動きです。ステーブルコインそのものは保有者に利回りを払わないことが多いため、手元の残高に利回りを付けたい事業者にとって、実物資産のトークンは補完になります。発表では PRIME と wYLDS それぞれの裏付け資産や利回りの水準は示されていません。
🪙 Aave で RLUSD の準備金と供給を第三者が独自検証
Aave のガバナンスフォーラムに、Ripple が発行するステーブルコイン RLUSD の準備金とオンチェーン供給量を、2025年8月から2026年8月まで照合した独自検証が投稿されました。投稿したのはトークン化担保の裏付け資産を公開情報だけで確かめる Unveil の創業者で、自身の立場も開示しています。RLUSD は Aave Core と、機関向けの実物資産市場 Horizon の両方で借入可能な資産になっています。Aavescan によると、2026年10月14日時点で Horizon では約1億5,900万ドルが供給され、約9,200万ドルが借りられています。投稿者は、これだけの規模になったことをリスク議論に役立てたい理由に挙げています。発行体による開示とは別に、第三者が公開情報で準備金と供給を突き合わせることは、Aave がステーブルコインを担保として扱い続けるかどうかを判断するときの材料になります。これはガバナンス提案ではなく、パラメータはまだ動いていません。
🪙 Circle、USDC の収益配分と償還手数料の実態を説明
Circle が公式ブログに「USDC の経済学と提携先が得をする理由」と題した記事を出しました。中身は、提携先が USDC から収益を得る仕組み、償還手数料についての事実関係、そして四半期に数兆ドルを決済するデジタルドルの基盤の3点です。ステーブルコインの発行体は、準備金の運用益を流通を担う取引所や事業者とどう分けるかで競っています。償還に手数料がかかるかどうかも、法人の利用者が発行体を選ぶときの論点です。Circle がこの2点を自ら説明したのは、提携先にとっての経済性を、USDC の供給を広げる武器として前面に出したものと読めます。候補の要約からは具体的な配分率や手数料の水準は読み取れないため、ここでは触れません。
🏢 Tether、中南米の機関向け基盤 EFY Finance に出資
Tether は2026年10月13日、EFY Finance のシードラウンドに出資したと発表しました。狙いは、Tether が発行する USD₮ と USA₮ の機関向けの用途を広げることです。中南米で、ステーブルコインと既存の金融システムをつなぐ基盤を強化するとしています。中南米は自国通貨の不安定さからドル建てのステーブルコインの需要が大きい地域で、個人の利用が先行してきました。今回の出資は、その需要を企業や金融機関の取引へ広げる部分に向けたものです。発行体が流通網そのものに出資して供給を後押しする形で、USD₮ に加えて USA₮ も対象に挙げている点は、Tether が2つのステーブルコインを並べて展開していることを示しています。出資額や EFY Finance の具体的なサービス内容は、発表の要約からは読み取れません。
🏛️ ECB、CBDC の保有上限が行動に与える影響を実験で検証
ECB が、個人向けの中央銀行デジタル通貨(CBDC)の保有上限が利用者の行動にどう影響するかを調べたワーキングペーパーを公表しました。保有上限は、提案されている個人向け CBDC の中心的な設計要素です。一人あたりの残高を機械的に抑える効果はありますが、それとは別に、利用者の行動にどちらの方向へ働くかは事前には分かりません。研究では、ユーロ圏4か国の参加者を対象に報酬を伴うオンライン実験を行い、上限の有無を研究者の側で変えて比べています。保有上限は、銀行預金が CBDC へ一気に流れ出すのを防ぐための仕組みとして、デジタルユーロの議論で繰り返し取り上げられてきました。民間のステーブルコインと公的なデジタル通貨の棲み分けにも関わる論点で、実験の結果は上限の水準や是非を詰める材料になります。
🔬 a16z crypto、再利用できる本人確認の設計を提案
a16z crypto が「KYC を考え直す」と題した論考を公開しました。主張は、銀行は本人確認(KYC)を避けたいのではなく、同じ顧客に何度も繰り返す重複した KYC を避けたいのだ、というものです。そのうえで、一度確認した結果を使い回せる資格情報、中身を明かさずに条件を満たすことだけを示すゼロ知識証明、オンチェーンのコンプライアンスの道具を組み合わせて、重複をなくす道筋を描いています。ステーブルコインやトークン化資産を金融機関が扱うとき、相手方の確認は避けて通れません。取引のたびに確認をやり直す負担は、オンチェーンの決済が速くても、実務が遅くなる原因になります。再利用できる本人確認が実装されるかどうかは、機関がステーブルコインやトークン化資産を使うときの費用に直接効く論点です。