長期側で動いたコインは平均5割の益 ― $77,700、$80,000手前で三日目の足踏み
2026年8月24日
1週間で2割超上げた相場は、$80,000の手前で三日目の小休止に入りました。8月24日7時5分時点の実勢価格は約$77,700で、24時間では+約1%(レンジ$75,500〜$78,100)。価格が動かない一方、オンチェーンの中身は大きく変わっています。長期側で動いたコインの損益が1週間で損失側から平均1.5倍へ跳ね上がり、米国勢の買い越しは日次の確定値でも表に出てきました。
(数値は8月24日7時5分(日本時間)時点までに取得した各種データに基づきます。価格とCoinbase Premiumはその時点の実勢、Fear & Greedは8月23日、オンチェーン指標は8月22日、ETF資金フローは8月21日、株・金などの終値は8月21日時点です。なお、オンチェーンの保有・年齢の指標には、ETF・取引所が預かっている分も含まれています。)
1. 全体像:金と原油が上げるなかでの高値もみ合い

- 水準: 8月24日7時5分時点で約$77,700。直近の確定日足終値は8月22日(UTC)の約$77,054です。50日移動平均(約$65,200)も200日移動平均(約$69,000)も大きく上回っていますが、50日線自体はまだ200日線の下にあり、移動平均の並び(デッドクロス圏)が好転するには時間がかかります。歴史的な位置としては、過去2年のレンジのなかでは下から4割程度の水準です。
- 外の環境(すべて8月21日の終値、米国は週末で休場のため金曜から更新なし): 金が4,680ドルと1日で+3.6%・5営業日で+6.9%と大きく上げ、WTI原油は87.06ドルで5営業日+5.7%。ホルムズ海峡の通航をめぐる緊張が続き、エネルギーにリスク上乗せ分が乗ったままです。S&P500は7,674と1日+0.4%ながら5営業日では-1.4%、VIX(=株式市場の恐怖指数)は15.1と落ち着いています。
- どこと一緒に動いているか: BTCとの30日相関は株(S&P500)+0.16に対し金+0.65。この夏のビットコインは株式よりも金と並んで動いています。ただしこれは値動きの並びであって、原因の説明ではありません。
- 効き方の下地: 1年以上動いていない供給は8月22日時点で62.3%。3か月前から+1.8ポイント戻しています。動かない供給が厚いほど、同じ規模の買い(あるいは売り)でも価格が動きやすくなる、という土俵の話です。
2. データの解説:注目すべき5つのポイント
① $79,500に二度はね返された水準で、三日横ばい

- 直近7日のレンジは$62,679〜$79,500で、7日前比は+約24%、30日前比は+約21%。一方、8月21日(UTC)に約$78,326で日足を終えたあとは$77,000前後での往復が続き、値幅の広さが目に見えて縮んでいます。
- Fear & Greed(=市場心理の指数)は8月23日時点で66(強欲)。前日の71からは少し落ち着きましたが、1週間前の34(恐怖)からは+32ポイントで、心理面の楽観は価格より先に走ったままです。

② 長期側で動いたコインが30日で23万BTC、その損益は平均1.5倍へ
- 長期保有層のネットポジション変化(=長期勢の保有量の増減、過去30日)は8月22日時点で約-23.5万BTC。1週間前(約-12.9万BTC)から倍近くに広がり、30日前(+約19.4万BTC)からは符号が反転しています。預かり分の混入を差し引いても、この規模と方向は変わりません。
- 長期勢SOPR(=長期勢の損益)は約1.47。1週間前は約0.96で、動いた古いコインには損失覚悟の売りが混じっていましたが、この1週間で取得時の平均およそ1.5倍(=5割弱の益)の値段で動く状態に変わりました。
- 保有量が減り、動いた分が利益に乗っている——独立した2つの指標が同じ向きを指しているので、長期側から市場への分配が進んでいると読める並びです。ただし過去4年で見れば長期勢SOPRは真ん中あたりの水準で、歴史的な過熱ではありません。
③ 短期勢の利益確定はいったん一服
- 短期勢SOPR(=短期勢の損益)は8月22日時点で約1.005。前日の約1.019から下がり、先週後半に集中した利確の勢いは緩みました。全体のSOPR(=動いたコインの損益)も約1.009と、1をわずかに上回る程度です。
- 短期保有者(保有155日未満)の平均取得原価は8月22日時点で約$68,400。実勢価格はこれを1割強上回っており、含み益のクッションは残っています。この水準を割り込むと、いまの「素直な利確」が「やれやれ売り」に変わるため、押し目の目安として最も分かりやすい線です。
④ 米国勢の買い越しが、確定値でも表に出た

- Coinbase Premium(=米国とそれ以外の価格差)は8月23日の確定値で+0.03%。1週間前の約-0.10%から切り上がり、2025年10月末以降の300日のなかでも上位5%に入る強さです。5月上旬から4か月近く続いた「米国勢の買いが海外に劣後する」状態は、数字のうえでも解消しました。
- ただしプラス圏はまだ1日。数日とどまって初めて「定着した」と言える段階です。

- ETF資金フローは8月21日に+約3.1億ドルで、5営業日連続の流入。直近7日合計は+約17.3億ドルで、週間としては2025年10月以来の大きさと報じられています。上場来の累計は+約538億ドルに達しました。8月22日・23日は米国が休場のため、この数字は8月21日で止まっています。
⑤ 建玉は減りながらの高値維持、清算は静かなまま

- 資金調達率(=先物の買い持ちが払う金利)は8時間あたり+0.0100%(年率換算 約+11.0%)。プラスは95回連続(約32日)で続いています。もっともこの銘柄の上限(±0.3%/8時間)にはまだ遠く、「過熱」と呼ぶ水準ではありません。
- 年率(+11.0%)から短期金利(13週Tビル 3.71%)を引いた上乗せ分は+7.2ポイントで、直近34日の平均(+2.6ポイント)を大きく超えています。現物を買って先物を売る形が、置いておくだけの金利に対して割に合う場面が続いている、という意味です(確実に取れる利回りではなく、現物の保管・取引所リスク・証拠金の追加が前提になります)。
- 建玉(=先物の未決済残高)は約10.5万BTC(約82億ドル)で、直近7日では-5.1%。価格が2割上がるあいだにレバレッジの規模はむしろ縮んでおり、この上げが現物主導だった構図は変わっていません。
- 清算も静かでした。Hyperliquidで観測できた分では直近24時間で約70万ドル(下限値)・97件にとどまり、ショートとロングがほぼ半々です。踏み上げの燃料はすでに一巡した形です。
(補足:ハッシュレートは945.9EH/sと30日で+13%、Puell Multiple(=マイナー収入の平年比)も0.95まで戻り、7月の採算悪化局面からは明確に持ち直しています。次回の難易度調整は-1.4%の見込みです。)
3. 相場転換を見極めるための「3つの分岐点」

- $80,000の上に積まれた帯を買いこなせるか: 取得原価の分布を見ると、いま価格がいる$70,000〜$80,000の供給は約160万BTCと相対的に薄い一方、その上の$80,000〜$90,000には約180万BTCが積み上がっています。$90,000〜$100,000にも約140万BTCが控えます。逆に下の$60,000〜$70,000は約350万BTCと最も厚く、押した場合の支えの候補です。$79,500で二度止まっているのは、この分布の形と整合的です。なおこれは取得原価の分布であって、誰が何枚持っているかまでは分かりません。
- 米国の買いが日程をまたいで続くか: プレミアムのプラスはまだ1日、ETFの数字も金曜で止まっています。外側の日程では、8月27〜29日のジャクソンホール会議が最大の焦点で、ウォーシュFRB議長が議長として初のスピーチを8月28日(現地10時)に行います。市場は9月の利上げを3分の1程度織り込んでおり、方向が振れれば今回の上げの起点だった金利の流れも変わります。財務省による長期国債の買い戻し拡大は9月9日からの実施予定です。
- レバレッジが後追いで膨らむか: いまは建玉が減りながら上げている健全な形ですが、資金調達率の上乗せが高いまま建玉が増え始めたら性格が変わります。買い持ちが積み上がった状態での下げは速くなりやすいため、価格よりも「率と建玉の並び」を先に見る価値があります。なお規制の日程としては、暗号資産の市場構造法案(CLARITY Act)の上院での審議入り採決が9月15日に設定されています。
総括
$80,000の手前で相場は三日、息を整えています。米国勢の買い越しは日次の確定値でも表れ、ETFには週間で17億ドル超が入り、レバレッジは膨らんでいない——需給の中身は先週より確実に良くなっています。一方で、長期側から出てくるコインは30日で23万BTCまで増え、その損益は5割弱の益に乗りました。価格が上がるほど出てきやすい種類の売りで、これを買い越しが吸収し続けられるかが目先の勝負です。バリュエーション(MVRV Z-Score=市場全体の含み益は約0.8)には過熱の兆しがなく、上値の余地は残っています。ただし価格のすぐ上には$80,000超の厚い取得原価の帯が控えており、ここを通過できるかどうかが、今回の急騰が新しいトレンドの入口だったのか、下げ相場のなかの強い戻りだったのかを分けることになります。
本稿は情報提供を目的としたものであり、投資助言ではありません。将来の価格動向を保証・示唆するものではなく、投資判断は各自の責任において行ってください。